切れ端、5

「外科医は決して走らない」

 

この言葉を初めて目にしたのは、海堂尊の小説だったはずだ。

チームバチスタで一躍有名になった医療系ミステリーの巨匠。

外科医は常に冷静に状況を判断し、時に冷酷な判断も下さなくてはならない。

走ることは焦りに繋がる。

故に、外科医は決して走らない。

 

私も、元来緊張して焦りから失敗するタイプである。

だからこそ、この言葉はすっと胸に入り込んできて、常に頭の片隅に置いている。

 

 

今日、めっちゃ走った。

だって、握手会場、昼からめっちゃならんでるんだもん。

焦るなって言う方が無理じゃない?

 

結果から言えば、会場に着いたのが5時15分過ぎ。

握手券付きCDはたくさんあった。

私が息を切らし、汗だくでCD販売所についたとき、前には3人。

聞き耳を立てていると「握手券はまだありますよ」とやりとりしている声。

胸をなで下ろす。

しかし、会場で握手券を買ったことなどない私。

いまいち勝手がわからない。

 

私「全タイプ残ってますか?」

ス「はい。どのタイプもございますよ」

私「じゃあ全タイプください」

ス「...え、あ、はい。全タイプですね。ありがとうございます」

 

焦りは判断力を狂わせる...。

 

 

ミニトークの優先エリア観覧券は残念ながら手にすることはできなかったので、とりあえず息を整え、汗が引くまで落ち着こうとスタバへイン。

アイスコーヒーなど嗜む。

優雅なひとときだ。

 

時刻は5時40分を回った。

ミニトークは優先エリア以外でも観覧自由だったので、イベントスペースの吹き抜け3階まで上がり、見下ろす形で観覧することにした。

眼下には「どっこー」、隣にはピンチケ。

最高のロケーションではないか。

 

ミニトークショーは、思いの外ミニで、正味15分もなかった。

アルバムの中でお気に入りの一曲と北海道グルメについての質問で終了。

スピーカーが1階用(当然)で、がんばれおじさんも多数沸いていたため、よく聞き取れない箇所も多かったが、もーこちゃんが「思い出ファーストがお気に入り」と話し、2番のサビをアカペラで歌い踊るというシーンがあったのは印象的だった。

 

トークショーが終わり、いよいよ握手会というはこびになったが、優先エリアが先と言うことで、優先エリア外の人間は指示に従うよう促される。

てっきりイベントスペースから列が伸びてどこかに並ぶのだろうと思っていたら、全く関係ない建物の外に追い出され、待機列を作らされること1時間。

5月末とはいえ、未だ夕方になれば冷える北海道の寒空。

震えながらTwitterしてたらついにスマホの充電が終焉の時を迎える。

 

いよいよやることがなくなって待つことさらに数十分。

ようやく建物内に戻り、握手会エリアに入ることが許された。

 

 

勢いで全タイプのアルバムを購入してしまった私の手元には4枚の握手券がある。

待機列が進む中、3人とどんな話しをするべきか、脳内会議を執り行う。

説明を忘れていたが、身バレを警戒した私は、普段着ないジャケットにいつもはしないメガネとマスクで完全な変装を施していた。

握手券をスタッフに渡し、手荷物を預けた時点で、素早く変装を解き、さらに臨時で作った小さな名札をメンバーの前でだけ着用する。

 

以下、ようやく握手レポ。

ちなみに並びは、れんたん→もーこちゃん→梅澤さんの順。

 

ROUND1

ヒ「はじめまして。ヒララっていいます」

れ「きらら?」

ヒ「(デジャヴ...!)いや、ヒララです(名札を指さす)」

れ「(名札を見て)ヒララさん。」

ヒ「はい。よろしくお願いします。またきます」

(お時間でーす)

れ「おねがいします」

 

ヒ「もーこちゃん!ヒララです」

も「...?」

ヒ「先月、握手会に行きました」

も「んー、おぼえてない!」

ヒ「だよね!」

(お時間でーす)

 

う「(すでに名札を見ている)ヒララさん。」

ヒ「(推せる...!)はい。ヒララです。よろしくおね」

(お時間でーす)

う「よろしくお願いします(笑)」

 

完全なる敗北。

初手で「きららさん」「おぼえてない」「おじかんです」のコンボはツラい。

あと、明らか梅澤さんだけ剥がし早い。

 

ROUND2

ヒ「また来ました」

れ「ありがとうございます」

ヒ「れんたん、大人っぽいですね」

れ「ほんとですか!ありがとうございます!」

(お時間でーす)

ヒ「またきます」

れ「ありがとうございます!」

 

ヒ「もーこちゃん、北海道来たことある?」

も「ない。初めてだよ」

ヒ「そうなんだ。楽しんでね」

(お時間でーす)

も「ありがとうございます。楽しみます」

 

う「おかえりなさい」

ヒ「(推せる...!)またきました。なんて呼ばれたら嬉しいですか?」

う「みなみ(みなみん?)」

ヒ「みなみ」

(お時間でーす)

う「ありがとうございます!」

 

竹ゴリさん、akiRaさん、ありがとう。

 

ROUND3

ヒ「またきました」

れ「ありがとうございます」

ヒ「今日、先輩方も来てるじゃない?一緒に来たの?」

れ「違うんですよ。別々なんです」

ヒ「そうなんだ」

(お時間でーす)

ヒ「またきます」

れ「ありがとうございます」

 

も「めっちゃくるじゃん(笑)」

ヒ「そりゃきますよ(笑)そういえば言い忘れてたけど、もーこちゃん推しです」

も「(笑)ありがとうございます(笑)」

(お時間でーす)

 

う「お帰りなさい」

ヒ「またきました」

う「ありがとうございます」

ヒ「うちの大園がいつもお世話になってます」

う「あ、はい...(苦笑)」

(お時間でーす)

ヒ「またきます」

 

「めっちゃ来るじゃん」に対する正解が未だにわからない。

 

RUOND4

ヒ「これでラストです」

れ「ありがとうございます」

ヒ「北海道楽しんでいってね」

れ「はい!ありがとうございます!楽しみます!」

(お時間でーす)

ヒ「またね!」

れ「(笑顔で手を振る)」

 

ヒ「これでラストです」

も「ありがとうございます」

ヒ「また握手会に遊びに行きますね」

も「うん!遊びに来て!」

ヒ「北海道、たのしんでね」

(お時間でーす)

も「ありがとうございます!」

 

ヒ「これでラストです」

う「ありがとうございます」

ヒ「最後まで北海道楽しんでいってね」

う「ありがとうございます。楽しみます!」

ヒ「バイバイ」

う「(笑顔で手を振る)」

 

 

「自分から名を名乗れ」「あいさつはしっかりしろ」という教育を(誰かから)受けた影響で、大概握手券の最初と最後はご挨拶で終わってしまう。

それはそれでいいものだと思う。

 

このあと、締めのあいさつまでちゃんと見届けて帰路についた。

握手会が終わったあとも、飛び跳ねながら3階まで手を振りまくってた3人がほんとに楽しそうで、なんだか見てるだけで笑顔になれる、そんな幸せな雰囲気を作れる3期生はやはり新しい風なんだろうと凡な感想を持った。

 

握手慣れしてないというのもあって、まだまだ言いたいこともちゃんと言えてないけど、推しに認知されるくらいにはちゃんとヲタ活していきたいなと思わされた握手会だった。

 

北海道でまたこんな幸せな時間があることを願って。

 

 

 

長々とお読みいただきありがとうございます。